近年、歯周病と認知症の関連性が注目されています。この2つの疾患は、一見すると無関係に思えるかもしれませんが、腸内環境を通じて深く関わり合っている可能性があります。この記事では、歯周病と認知症の関係性、腸内環境の重要性、そして乳酸菌がもたらす可能性について科学的エビデンスを基に考察します。
歯周病と認知症の関連性――そのメカニズムとは？
歯周病は、歯茎や歯槽骨に炎症を引き起こす疾患です。一方、認知症は記憶や思考能力に影響を与える脳の疾患です。この2つがどのように関連しているのでしょうか？
炎症性物質の全身への影響
歯周病菌が血流に入り込むと、体内で炎症性物質（サイトカイン）が生成されます。これらの物質は、脳にも到達し、認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります［1］。
アミロイドβと歯周病菌
研究によると、歯周病菌が認知症の主要な原因物質であるアミロイドβの生成を促進する可能性があります［2］。これにより、アルツハイマー型認知症のリスクが高まると考えられています。
腸内環境が歯周病と認知症に与える影響
腸内環境は、全身の健康に大きな影響を与えます。歯周病と認知症の関連性にも、腸内環境が関与している可能性があります。
腸内細菌と炎症の抑制
腸内には、善玉菌（乳酸菌やビフィズス菌など）と悪玉菌が存在します。善玉菌が優勢な腸内環境では、炎症性物質の生成が抑制され、歯周病や認知症のリスクを軽減する可能性があります［3］。
腸漏れと全身への影響
腸内環境が乱れると、腸壁のバリア機能が低下し、「腸漏れ」と呼ばれる状態が発生します。この状態では、炎症性物質や毒素が血流に漏れ出し、全身に悪影響を及ぼします［4］。
乳酸菌がもたらす可能性――腸内環境の改善と認知機能への影響
乳酸菌は、腸内環境を整えるだけでなく、認知症や歯周病の予防にも寄与する可能性があります。
乳酸菌の働き
- 善玉菌の増加: 乳酸菌は善玉菌を増やし、腸内フローラのバランスを整えます。
- 炎症の抑制: 炎症性物質の生成を抑え、全身の健康をサポートします。
- 認知機能の改善: 乳酸菌の摂取により、認知症の症状が軽減したという研究結果も報告されています［5］。
科学的エビデンス
ある研究では、Lactobacillus reuteri の摂取により、歯周病の症状が改善し、同時に炎症性物質が減少することが確認されました［6］。また、乳酸菌が腸内環境を整えることで、認知症のリスクを軽減する可能性が示唆されています［7］。
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引用文献
- Offenbacher, S., et al. (1996). Periodontal disease as a potential risk factor for systemic diseases. Journal of Periodontology, 67, 1103-1112.
- Dominy, S. S., et al. (2019). Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors. Science Advances, 5(1), eaau3333.
- Round, J. L., & Mazmanian, S. K. (2009). The gut microbiota shapes intestinal immune responses during health and disease. Nature Reviews Immunology, 9(5), 313-323.
- Fasano, A. (2012). Leaky gut and autoimmune diseases. Clinical Reviews in Allergy & Immunology, 42(1), 71-78.
- Kobayashi, Y., et al. (2019). Effects of probiotic consumption on periodontal inflammation and intestinal microbiota: A double-blind, placebo-controlled, randomized trial. Nutrients, 11(10), 2514.
- Kang, M. S., et al. (2006). Inhibitory effect of Lactobacillus reuteri on periodontopathogens and its application to periodontitis. Journal of Clinical Periodontology, 33(11), 830-836.
- Nagpal, R., et al. (2018). Gut microbiome and aging: Physiological and mechanistic insights. Nutrition and Healthy Aging, 4(4), 267-285.
